のらりくらり

物理化学分野のポスドクです。プログラミング、読書、自転車などが好きです。

会社を辞めることにした

2019年8月末で、1年5ヶ月働いた化学会社を辞めることにしました。 今後は当面、博士課程の頃にいた研究室で研究員として働かせてもらいつつ、次を考えていく予定です。 この記事は、「博士課程卒業後に民間企業に行ったものの、アカデミック方面の学術研究がもう少し諦めらなくて非論理的な決断をした人」の記録として残しておきます。

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会社に違和感を感じ始めた

会社に入って8ヶ月ほどたった頃、自分が入社前に思い描いていた働き方と業務内容が大きくかけ離れていることに気がつきました。 もともと自分のスキルセットとしては、大規模計算機を使った計算化学や、科学技術計算のプログラミング、そのほかスクリプティングなどでした。同時に、これらは自分の志向ともあっており、非常に楽しんで没頭できるものでもありました。

昨今は化学プラントもデジタル化・自動化に多くの会社が励んでいる状況で、自分もこれらに対応するべく数理科学・プログラミングなどのスキルを求められる仕事をさせてもらうことを希望していました。(内定の連絡もらった時もこれまでの経験を活かして〜みたいなこと言われたんだけどなぁ…)

一方で、会社で自分が本採用の際に配属されたのは、工場で炭素関係の材料を扱う技術部署でした。そこで実際にやっていた仕事は、多少の実験の他は、社外との契約書の取り交わしを始めとしておおよそ調整と言ったほうが良さそうな業務がほとんどでした(これらはもちろん、誰かがやらなくてはいけない仕事なわけで、重要なことに代わりはないのですが)。 加えて、大学院時代にほとんど実験をしていなかったこともあり、あまりに自分の手先が不器用な上に実験ばかりを集中的に練習できる時間がなかったこともきついものがありました。

もともと数理科学の面からできるだけ色々なドメインでの仕事をすることでスキルを向上させることを目標にしていた自分にとって、どうしてもこれは乖離が大きかった、というのが本音です。 わざわざ博士号をとったあとで、それまでに身につけたスキルを退化させながらやるべき仕事かと言うことに悩むこととなりました。

指導教員に相談をしてみた

2019年1月、上に述べた違和感を自分の指導教員に相談するから始まりました。この時には、既に「この会社ですぐにでも異動にならない限り、この会社に長くはいないだろう」という気持ちになっていました。

しかし、この時にはまだ自分が次に何をしたいのかと言えば、漠然と「アカデミックでもうちょっと挑戦して見たい」という気持ちはあったものの、確信を持つことはできませんでした。プログラマに転向するための転職活動も(わずかながら)行いました。 実際にアカデミックポジションを目指すきっかけとなったのは、指導教員と自分の仕事や勤務先のことなど色々と話していたときに、「要するに、君はまだ数理科学の研究がやりたいんだな」と言われてハッとしたところからです。

この時から、アカデミック路線に絞り、自分の次なる研究テーマを探し始めました。 有給をとって学会を聴講したり、興味のある分野の先生にメールして話を聞かせてもらったり、実際に海外の行き先を探したりということをするようになりました。

会社を辞めることにした

およそ4−5ヶ月に渡って、色々と論文を読んで人に話を聞いたり、海外の行き先を探したりすることを続けていました。 しかし、趣味ではなくアカデミック路線への復帰を目指す以上、地方で働きながら片手間でこれらを続けるのは現実的に難しいと感じ始めました。 また、海外への留学準備に必要なノウハウも持っておらず、やはり相談相手が必要なことに気がつきました。

そこで、5月ごろから、6月のボーナスをもらったら会社を辞めることを考え始めました。 この時には本当にその選択をするべきか、かなり悶々としていましたが、最終的に意を決して指導教員に相談したところ「自分の研究以外にも、研究室の仕事もやってくれるなら引き受ける」という返事をいただき、戻ることになりました。ありがたい限りです。

そして7月24日に上司に退職を切り出し、その日に部の部長とも面談をしてなんとか退職を認めていただきました。

9月からの職種は、某研究所の研究員(任期付)です。前の仕事の給与+残業代には届かないし、ボーナスもありません。 それでも、自分のペースで仕事を進められるし、何より自分の好き・楽しいと思えることでお金をもらえるのだから、とりあえずとても幸せなものです。

今後のこと

これまでの経験が吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、工場で働くことになった経験は非常に多くの勉強になりました。

今後は、自分の次の行き先、できれば海外研究室への留学先を一刻も早く見つけるべく活動すると同時に、博士課程の頃の研究の延長も並行して行うことでアウトプットを維持したいと考えています。